非同期処理って何?並行処理と違うの?
質問者:ajaxの説明で非同期の必要性について説明してほしい。非同期はタイミングをずらす処理だろ?言ってることは並行処理に聞こえるぞ。
回答者:その通りです。非同期処理と並行処理は確かに混同しやすい概念ですね。
Ajaxにおける非同期処理は、厳密には「タイミングをずらす」処理です。サーバーへのリクエストを送信した後、レスポンスを待つ間にブラウザが他の処理を続行できるようにする仕組みです。
なぜこれが必要かというと、ウェブブラウザは基本的にシングルスレッドで動作するからです。もし同期的にサーバー通信を行うと、レスポンスが返ってくるまでの間、ブラウザのメインスレッドがブロックされてしまいます。その結果、ユーザーはボタンをクリックできない、スクロールできない、画面が固まったような状態になります。
非同期処理では、リクエストを送信してから「後で結果を教えてね」という形で処理を委譲し、その間にブラウザは他のユーザー操作やDOM操作を継続できます。レスポンスが返ってきたときに、あらかじめ登録しておいたコールバック関数やPromiseの処理が実行されるという流れです。
つまり、複数の処理を同時に実行する並行処理とは異なり、処理の実行順序を制御してユーザーエクスペリエンスを向上させるのが非同期処理の本質です。
処理を「誰に」委譲するの?
質問者:処理の委譲?誰に?
回答者:良い指摘ですね。「委譲」という表現が曖昧でした。
正確には、ブラウザのメインスレッド(JavaScript実行スレッド)から、ブラウザの別のシステムに処理を渡しています。
具体的には:
- ネットワーク処理:ブラウザのネットワークスタックやHTTPクライアント機能
- タイマー処理:ブラウザのタイマー管理システム
- DOM操作:ブラウザのレンダリングエンジン
これらはJavaScriptエンジンとは別の、ブラウザ内部の仕組みです。
例えばAjaxリクエストの場合、JavaScriptは「このURLにリクエストを送って、返事が来たらこの関数を呼んで」とブラウザのネットワーク機能に指示を出します。その後、JavaScriptのメインスレッドは他の処理を続行し、ネットワーク処理は並行して動作します。
レスポンスが返ってくると、ブラウザがイベントループを通じて「返事が来ましたよ」とJavaScriptに通知し、指定されたコールバック関数が実行される、という流れです。
つまり、JavaScriptから見ると「処理を後回しにして、結果は後で教えてもらう」という非同期的な動作になります。
JavaScriptの中では結局どうなっているの?
質問者:なんとなくわかるが、js内においては非同期、つまり...
回答者:はい、その通りです。JavaScript内においては確かに非同期処理ですが、実際のところJavaScript自体は同期的に動作しています。
JavaScriptエンジンは基本的にシングルスレッドで、一度に一つの処理しか実行できません。では「非同期」とは何かというと、処理の完了を待たずに次の処理に進むということです。
具体的には:
- Ajaxリクエストを発行する
- レスポンスの完了を待たずに、すぐに次の行のコードを実行する
- レスポンスが返ってきたら、その時点でコールバック関数を実行する
つまり、JavaScript視点では「処理を開始したけど、完了するまで待機しない」という動作です。これが非同期処理の本質です。
一方で、実際のネットワーク通信やタイマー処理などは、ブラウザの他の部分で並行して動いています。でもJavaScript自身は依然として一つずつ順番に処理を実行しているのです。
だから「非同期」という名前がついているのは、処理の開始と完了のタイミングがずれているからなんですね。
ブラウザのエンジンについて
質問者:ブラウザのエンジンってjsの他になにがある?
回答者:ブラウザは複数のエンジンが連携して動作しています。主要なものは:
JavaScriptエンジン
- Chrome/Edge: V8
- Firefox: SpiderMonkey
- Safari: JavaScriptCore
レンダリングエンジン
- Chrome/Edge: Blink
- Firefox: Gecko
- Safari: WebKit
その他の重要な機能
- ネットワークスタック:HTTP通信、DNS解決などを担当
- レイアウトエンジン:CSS解析、要素の配置計算
- グラフィックスエンジン:実際の描画処理
- イベントシステム:マウスクリック、キーボード入力などの管理
これらはそれぞれ独立したプロセスやスレッドで動作することが多いです。
例えば、Ajaxリクエストの際:
- JavaScriptエンジンがリクエストを発行
- ネットワークスタックが実際の通信を処理
- レスポンスが返ってきたら、イベントシステムが検知
- JavaScriptエンジンに「データが来ました」と通知
この仕組みにより、JavaScript自体はシングルスレッドでありながら、ブラウザ全体としては複数の処理を並行して実行できるんです。だからAjax通信中でも画面操作が可能になります。
JavaScriptが主導している?
質問者:jsが全てを主導しているようにみえるが。
回答者:その通りです!JavaScriptが主導権を握っているように見えますね。
実際、ユーザーが書くコードの視点から見ると、JavaScriptがすべてをコントロールしているように感じられます。Ajax通信も、DOM操作も、イベント処理も、すべてJavaScriptのAPIを通じて指示を出しますから。
でも実は、JavaScriptは**「指示を出す役割」**なんです。
例えば:
fetch()
でリクエストを送る → 実際の通信はネットワークスタックが担当addEventListener()
でイベントを登録 → 実際のイベント検知はブラウザのイベントシステムが担当setTimeout()
でタイマーを設定 → 実際の時間管理はブラウザのタイマーシステムが担当
つまり、JavaScriptは**「司令塔」**の役割で、実際の重い処理は他のエンジンが担当している構造です。
だから、JavaScriptから見ると「自分がすべてを制御している」ように見えるけど、実際は「他の部署に仕事を依頼して、結果を受け取っている」という関係性なんです。
この仕組みがあるからこそ、JavaScriptがシングルスレッドでも、ブラウザ全体としてはマルチタスクな動作が可能になります。
プロジェクトディレクターの例え
質問者:jsがディレクターで外注に出して帰ってくるまで別の作業しているようなものか?
回答者:まさにその通りです!とても良い例えですね。
JavaScriptはプロジェクトディレクターで:
- 「このAPIにデータを取りに行って」→ ネットワーク部門に外注
- 「3秒後にこの処理を実行して」→ タイマー部門に外注
- 「この画面更新しておいて」→ レンダリング部門に外注
そして外注に出している間は、別の仕事(他のコード)を続行します。
外注先から「作業完了しました!」と連絡が来ると(これがコールバックやPromiseの発火)、その結果を受け取って次の指示を出す。
この仕組みだから:
- Ajax通信中でも、ユーザーのボタンクリックに反応できる
- 複数のAPIを同時に呼び出せる
- タイマーが動いている間も、他の処理ができる
もしJavaScriptが「外注先の作業完了まで待機する」同期的な動作だったら、その間は完全に手が止まってしまいます。
だから「非同期」というのは、外注に出したら結果を待たずに次の仕事に取りかかるという、まさにディレクターの効率的な働き方なんです。
DOM操作のタイミング
質問者:dom操作は納品された時にjsがやる次の作業ということか?
回答者:その通りです!とても良い理解ですね。
Ajax通信の場合:
- 外注依頼:「このAPIからデータを取ってきて」
- 別作業継続:外注先の作業中は他のコード実行
- 納品受取:データが返ってくる(コールバック/Promise発火)
- 次の作業:受け取ったデータでDOM操作を実行
つまり、DOM操作は**「納品されたデータを使って行う次の作業」**です。
例えば:
- 外注先から「ユーザー一覧のデータです」と納品
- JavaScriptディレクターが「じゃあこのデータでHTML要素を作って画面に表示して」と次の指示
ただし、DOM操作自体もまた外注なんです。JavaScriptは「この要素を追加して」とレンダリングエンジンに指示を出すだけで、実際の画面描画はレンダリングエンジンがやります。
だから正確には: 外注→納品→次の外注依頼→また別の作業継続
JavaScriptは本当にディレクター業務に徹していて、「実際に手を動かす作業」は基本的に他のエンジンに任せているんです。